【建築家とつくる家】episode1 ~困難な土地条件で唯一無二を惹きだす設計力~
こんにちは^^ BLOG管理人のkoukiです。
第1弾目となる建築家紹介は、株式会社syncstudio 一級建築士事務所の代表取締役 杉本先生です。
『自然の持つ豊かさを享受できるおおらかな建築。心地よい風が通り抜ける、五感を開放する空間。その敷地が置かれた環境を読み取り、自然の摂理を身体で感じ、
その場所でしか建たない建物を設計することを大切にしています。心を解き放つ建築』
(▲株式会社syncstudio 一級建築士事務所様HPより引用)
今回ご縁あって撮影用のインテリアスタイリングを担当させていただいたのですが、この言葉のとおり現場では木々が初夏の風に揺られて柔らかくささやき、そこには小鳥のさえずりが耳に心地よく響きわたる…そんななんとも気持ち良い空気が流れていました。この心地よい空気感のはいったいどのようにして生みだされるのか…その秘訣を少しづつ紐解いていきたいと思います。
“家づくり”というのは人生で最も重要な決断の一つです。その人生の物語を誰と一緒に繰り広げるのか…こちらのブログが、何か一つでも皆様の家づくりの参考になっていただけると幸いです。
【建築家とつくる家】episode1 ~困難な土地条件で唯一無二を惹きだす設計力~
大阪府池田市に建つ『五月丘の家』
今回のこちらの住宅。大阪府池田市 五月山のふもとにあり、2階に設けたLDKからは大阪平野の絶景を一望できる好立地。しかしその魅力とは相反するかのように、土地条件は非常に厳しく、多くの課題を併せ持つ敷地というところから家づくりはスタートしたようなのです。
episode1では、その土地条件にスポットをあててお届けしていきたいと思います。
多くの設計者が手を上げてしまうような困難な土地条件を見事に操り、住まう人だけに許された至福の時間を堪能できる空間へと昇華させた設計秘話をどうぞお楽しみください。
斜面地かつ”建ぺい率40%”の手ごわい土地条件とは
建ぺい率(けんぺいりつ)、聞きなれない言葉ですよね。建ぺい率とは、敷地に対し、実際に建物を建築できる広さ(真上から見た)の割合の事を指します。
この建ぺい率は、数値が大きすぎるとお隣との距離が近い窮屈な住宅街となってしまい、逆に数値が低すぎると間取りを広く取れないというデメリットが生じるため、一般的な住宅では敷地に対して50~60%程度が良いとされています。
そんな中、今回の土地の建ぺい率は40%。この厳しい規制に加え、なんと敷地の半分以上が急勾配の斜面地。ありふれた設計では小さな間取りの家しか建てられず、確かな設計力と技術力が試される非常に厳しい土地条件だったそうです。
そんな土地であったせいか、絶景の好立地にも関わらず誰も手を付けられず残っていたそう。
そのような困難な土地を、いったいどのような方法でこんなにも開放的で広々とした空間をもつ建物へと変貌させたのでしょうか?
『地下室』という選択
地下室を得意とされる建築家の杉本さん。大阪中津に構えたアトリエ事務所兼自邸にも地下室を採用されており、初めて事務所に訪問させていただいた際には、グレーチングの隙間から自然光の差し込む地下空間が顔をのぞかせており、非常に印象的でした。
今回の物件も、自邸での経験をもとに早い段階で地下室を設ける計画をお施主様にご提案し、寝室を地下に配置することで地上2階部分には広々とした開放的なLDK空間を実現されたそうです。
高度な技術力を要する地下室建築
建築中のお写真を拝見し、斜面地での地下室建築の難しさを目の当たりにしました。
大きな重機を使い、隣地の土が崩れてこないように慎重に土を掘り進めながら、周囲の土圧を留める作業とを同時進行で進めている様子です。
古くて背の高い擁壁の上にある敷地の扱いは非常にデリケートで、施工業者さんとの綿密な打ち合わせの元に細心の注意を払いながら掘り進められるこちらの作業は、数ある作業の中でも最も神経を使う工程だったのではないでしょうか。
平坦な土地でも難しそうなこの作業を、斜面地で、且つ重機の搬入が難しい住宅街の限られたスペースの中で行うのですから、誰も手を付けられなかったというのも理解できます。
それを初期の段階で”いける”と判断できる確かな勘と、実際に実現させてみせる設計技術力からは、杉本さんが誠実に積み上げられてこられた経験値の深さが伝わってきます。
優雅に佇む建物の裏側
緑豊かな山々に囲まれた地に凛と佇むその姿は、静寂を感じる木々の狭間に美しく溶け込んでいます。
“景色の良いテラスで朝食を食べたい”当初の奥様のご要望を見事に叶えられた建物。その優雅な佇まいからは想像もできないような難しい設計工程を経て、この唯一無二の特等席は創り上げられたのですね。
設計監理:株式会社syncstudio 一級建築士事務所 代表取締役 杉本清史
施工:眞正工業株式会社
造園:緑向ガーデン 谷向俊樹
建築撮影:今西浩文
建築撮影用インテリアスタイリング:LIA DESIGN